Page 5 - new_190912_1103
P. 5

トランジットでメキシコシティに降り、  「えっ、いつ来
                                            名物宿「ペンション・アミーゴ」に泊まっ            たんですか?」
                                            ている。日本人ご用達のいわゆる“日本              「 ちょ う ど 20
                                            人宿”だ。                          年前だけど」
                                             メキシコ名物(?)の菓子パンを買い込             「あ、それなら
                                            み、宿に戻ると、さっきまで団らん室に             僕、会ってます
                                            いた旅人たちの姿はすでになかった。み             ね」
                                            んな部屋に戻ったらしい。20 年前はいつ            「えっ」
                                            もここで飲み明かしていたんだけどなあ。  「僕、トヨです」
                                                                                                  ೥ͿΓʹ
                                                                                                                ࠨ୺ͷࢠڙ͕    ೥લͷτϤɻ
                        Ωϡʔό ฤ              旅人のノリもずいぶん変わったものだ。              「えええっ !?」         ࠶ձͨ͠τϤ          ๻ʢਅΜதʣ΋ࠓͱ͸͍ͩͿҧ͏͕ʜ
                                             日本人宿は世界各地にある。海外まで              驚いた。この宿
                   ୈ̒ ࿩
                                            行って日本人同士つるむ傾向を批判する             の主人であるメキシコ人女性のパスちゃ              昔は昔で問題がありましたが」
                  ೔ຊਓ॓
                                            向きもあるが、僕はまあいいんじゃない             んと日本人の夫とのあいだにできた子供、  かつてはヒッピーやジャンキーの巣窟
                                            の、と思う。外国語が得意じゃない人もい            トヨのことはよく覚えている。当時は5              のようになっていたのだ。それをパス
                                            る。海外をまわってできた友だちが日本             歳ぐらいだった。天使のようにかわいく              ちゃんが問題視し、一掃したという話は
                                            人だけだったらちょっと寂しい気もする             て、愛嬌があったから、みんなにかわい              聞いていた。
                            United States   が、ようは本人がよければそれでいい。             がってもらっていたのだ。しかしいま目               でもなんとなくだが、濃い旅人自体
                                             僕の場合は自転車旅行なので普段は現             の前にいるトヨは、おっさ……いや、えら             が減ったように思う。一ヵ所に長く滞在
                                            地の人間としか関わらない。だから大き             く貫禄が付いた。言われたところで昔の              するより、軽快に旅する人が多くなった。
                                   Brazil
                                            な町や観光地に行くと日本語がしゃべり             トヨのイメージとまったく結びつかない。 「世界一周」が合言葉のようになり、専
                                            たくて日本人宿をよく利用していた。               「俺、自転車で旅してたんだけど、覚              用のチケットで半年から1年ぐらいで世
                                             団らん室で日記を書いていると、メキ             えてる?」                           界を一周する。観光地は効率よく巡って
                                            シコ人の男性が入ってきた。受付をして              「うーん、自転車の人もたくさん来ま              いるようだが、どうも忙しない。ま、そ
                                            くれた宿の人だ。上手な日本語を話す。             すからね」                           れも本人がよければいいんだけど……。
                                            いろいろ聞きたいことがあったからちょ              「そりゃそうだよな」                     でもトヨは手厳しかった。
                                 ˔ੴాΏ͏͚͢ɿ
                                 ཱྀߦ࡞Ոɻ̓೥    うどよかった。                         自転車で世界をまわるとすごい人のよ               「最近はバカばっかり。英語もスペイ
                                 ൒͔͚ͯࣗసं     「最近は宿泊客の数はいつもこんな感             うに思われがちだけれど、実はそういう              ン語も話せない人が多いよ」
                                 ͰੈքҰपΛ׶
                                 ߦɻ̕ສ̑ઍΩ    じなの?」                          人間は掃いて捨てるぐらい大勢いる。し               これは僕の見解ではなく、トヨの言葉
                                 ϩɺ  ϱࠃΛ૸
                                 Γɺ     ೥ ຤   今日は 10 人もいないだろう。             かも 20 年も前だ。覚えているわけがない。 だ。――と逃げを打ってから言うのだが、
                                 ʹؼࠃɻݱࡏ͸
               શࠃ֤஍Ͱߨԋ΋ߦ͏ɻஶॻʹʰߦ͔ͣʹࢮͶΔ        「そうですね。これぐらいかな」                「そっか。じゃあ宿の変遷を見てきた              高速で移動しながら、日本人宿ばかり渡
               ͔ʂʱʰ஍ਤΛഁͬͯߦͬͯ΍Εʂʱ΄͔ɻϒϩά΋ߋ     「そっかあ。昔は毎日すごかったんだ             んだな。ずいぶん変わったね」                  り歩けば、語学もあんまりのびないだろ
               ৽தˠʮੴాΏ͏͚͢ͷΤοηΠଂʯ
                                            けどな」                            「日本人旅行者は減りましたね。ま、              うね。







































                      自然の恵み、肥沃な土壌、たしかな米作りの伝統 - おいしい                     だから「彩錦」は年間を通していつもフレッシュ。100%日本産の
                      お米の生育にとってこの上ない条件の米どころ新潟で、限定契                      美味しさと品質を、英国在住の皆様にも安定的にお届けできる
                      約農家が一粒ひとつぶ丹精込めて育て上げた最高級米こしひか                      のです。ふっくらと大粒、もち肌の、繊細で美しい光沢、甘み、
                      り「彩錦(あやにしき)」。刈り取られたお米は玄米から精米を                     香り、旨味、そして食感。すべてにおいて究極の、新潟県限定
                      経て輸送にいたるまで、常に徹底低温管理されています。                        契約農家産最高級こしひかり「彩錦」を是非ご堪能ください。



                      取扱日系小売店        Atari-Ya Finchley/Golders Green/Kingston/West Acton|Cocoro Highgate|Hello Kitchen|Ichiba Westfield
                      (アルファベット順)     Japan Centre Panton Street|Kantenya|Kimura|La Petite Poissonnerie|Mikazukido|Natural Natural Ealing/Finchley
                                     Rice Wine Shop|Stanton House Hotel|TK Trading

              5                   12 SEP 2019  /  No 1103





          P00_190912_yusuke.indd   5                                                                                             2019/09/09   16:43:24
   1   2   3   4   5   6   7   8   9   10